生活スタイルを見直す”リ・ファッション”の推進によって、循環型社会の実現と、生活の質的向上を目指します。
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鈴木純子のリ・ファッション対談
(社)日本リ・ファッション協会、代表理事の鈴木純子が、リ・ファッションに関係するキーパーソンと対談し、リ・ファッションとは何かを掘り下げると共に、それぞれのリ・ファッションに捧げる情熱に迫ります。
第4回目は、ファッションジャーナリストで杉野服飾大学教授、またNPO法人ユニバーサルファッション協会の理事長である織田晃氏をお招きしました。さあ、どのような対談が繰り広げられるでしょうか。

鈴木 こんにちは、織田先生。今回はリ・ファッション対談をお引き受けくださいまして、ありがとうございました。リ・ファッション・ワークショップ2009の時の講演も素晴らしかったのですが、先日のファッションビジネス学会の全国大会での研究発表を伺って、何としても先生と対談したいと思いまして、ご多忙のところ、お時間を頂戴した次第です。
織田 恐縮です。ありがとうございます。
鈴木 まずは、先生の経歴から。ファッションジャーナリストとしてスタートされたんですよね。
織田 繊研新聞社に入社して30年、ファッション一筋でした。レディスのコレクション取材が主な仕事でした。
鈴木 なぜレディスだったのですか。
織田 ファッションは一番動きのある業界で、なかでもレディスはクリエーションの頂点だと思ったからです。当時は朝日新聞ぐらいしか専任をおいていなかった時代です。1970年代後半から1980年にかけて、パリコレには、若いデザイナーが次々にデビューしました。黎明期から黄金期を見てきたと言えるでしょうね。70年代初頭は60程しかなかったコレクションが、最盛期の80年代には2倍以上の130にもなりました。
鈴木 ファッションが一番力を持っていた時代をつぶさに見ていらっしゃったんですね。
織田 右肩上がりの時代です。ファッション化社会なんて言葉が生まれたのもこの時期です。
鈴木 でも、そうはなりませんでしたね。
織田 そう、90年代になると、プレタポルテは衰退し、現在では90ブランド程に減っています。
 
鈴木 これからはどうなると予測されますか。
織田 エルメスの元トップ、ジャン・ルイ・デュマが「成長することを恐れ、成長しないことを恐れ、成長しすぎて手に負えないことを恐れる」と言っています。利益を追い求め合理的、効率的にすることによってグレードが落ち、商品に対する思い入れがなくなる。それではダメだと言うことです。「時を越えても価値のあるモノを作ることしか、我々の生き残る道はない」と、これはカルティエCEOの言葉です。そんな言葉が今、すごく新鮮に聞こえます。
鈴木 どちらも素晴らしい言葉ですね。リ・ファッションの目指すところは、まさに時代を超えて長く愛用できるものです。
織田 パリコレの人気ブランドの多くには“流行を取り入れる”力と、“流行を跳ね返す”力、2つの力があります。 これはリ・ファッションに通ずるところがあると思います。ユニバーサルデザインも同じこと。ユニバーサルデザインというと、介護やお年寄りのための服ということで、デザインを機能から発想しようとする。これではダメなんですね。介護する側が着させやすい服ではなく、介護される側が着たい服を作らなくてはいけない。誰でも着られる服は誰も着たくない服です。着にくくても、着させにくくても、人は着たい服を着るべきだと思いませんか。
鈴木 その通りです。年齢や体型に関係なく、着たい服を着ることが、結果その服を長く愛用することにつながると思います。
織田 長く着たい服。これからの服づくりにとってとても大切な視点だと思います。昨年ファストファッションに関する意識調査を行いました。ファストファッションは若者の98%が持っています。理由は安いから。そして持っている人の75%が「満足している」と答えています。しかし、その82%が「3年以内に捨ててしまう」と答えています。これからも買い続けるかという質問には、41%がYES、39%がNOと微妙な回答でした。
鈴木 面白い調査結果ですね。安いし、とりあえずまあ満足だけれど、捨てることが前提の服をこれからも買うとなると…迷うところがあるのでしょうね。
織田 ファッションは「これでいい」といっているのがファストファッションです。それを見た多くのアパレルメーカーは「あれでいいのか」と思ってしまった。これからは、「これでいい」「あれでいい」ではなく「これがいい」を作っていくことが求められていくと思います。80?90年代は、大衆消費としてのトレンドが大きな牽引役となりました。これからは、私的消費としての満足がこれに取って代わるでしょう。
鈴木 なるほど、「これでいい」ではなく、「これがいい」という私的満足ですか。みんなと同じではなく、私だけのということですね。
 
織田 パリでは21世紀になって、プレタポルテよりオートクチュールが勢いを増しています。バッグや靴のオーダーメードも伸びています。ラグジュアリーブランドでもショップ限定、地域限定といったものが売れはじめています。きちんと作って、きちんと着る時代がやってきているのです。
鈴木 私は子どもの頃、母の手作りの服を着て育ちました。そのせいもあるかもしれませんが、これからはフルオーダーメードが注目されるのではと思っているのですが…
織田 「何を作っても売れない」と言いますが、答えは非常に簡単。ファストファッションには作れないものを作ればいいのです。フランソワーズ・ジルボーはカジュアルなデザインが得意なのですが、今回のコレクションでは、ルフラン・フェランというオートクチュールのデザイナーを起用しました。ファストファッションでは作れない服を作ろうとしている。
鈴木 先生のお話を伺っていると、元気がみなぎってきます。私たちは間違っていなかったんですね。
織田 リ・ファッション協会の立ち上げはとてもタイムリーだと思いますよ。ユニバーサルファッションにも、リ・ファッションにも、求められるのはデザイン力です。そして、その裏付けとなるのが、収縮の時代にきちんと向き合う勇気と思想、そして仕掛けです。ぜひ一緒にやっていきましょう。
鈴木 恐縮です。こちらこそ、先生のお知恵を拝借して、いろいろとコラボレーションさせていただければと思っております。今日は示唆に富んだお話しをありがとうございました。これからもよろしくお願い申し上げます。
 

織田晃(おだ・あきら)
・ファッションジャーナリスト
・NPO法人ユニバーサルファッション協会理事長
・杉野服飾大学教授
・桑沢デザイン研究所講師
・著書に「パリコレクション20」、「ユニバーサルファッション宣言」(共著)など

・好きな食べ物、お酒 秋刀魚の塩焼き ワイン 
・理想的な休日の過ごし方 都心を離れて飲んだくれる
・座右の銘 果報は寝て待て
・自慢のコレクション 30年代の食器

◆photo by Keiko Watanabe 
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