|
鈴木 |
今回は、リ・ファッション対談をお引き受けくださいまして、ありがとうございます。日本リ・ジュエリー協議会さまは、初の相互団体会員です。相互団体会員とは、志を同じくする団体が、相互に協力し合って、その目的を達成しようというものです。
まず、お名前の「リ・」という部分にとても親しみを感じます。その辺りのことはおいおい伺うとして、まずは設立のきっかけから教えてください。 |
高村 |
私自身は宝飾店のコンサルティングを行ってきました。宝飾店はもともと来店客数が少ないのですが、バブル崩壊後はさらに落ち込みました。では、どうやったら来店客数を増せるか。それは、メンテナンス・サービスを充実させることに尽きます。ジュエリーというのはいつまでも手元に残るもので、飽きたからと言って捨てる人はいません。
使われない理由で多いのが、壊れている、デザインが古いということなんです。であれば、それを解決すればいいんですよね。そういうアクションを起こせば、来店動機になります。そんなことを十数年前から言い続けていました。一緒にアクションを起こしていく仲間はすぐに増えるだろうと思っていたのですが、なかなかそうはいかない。70社で足踏み状態が続いていました。これが個人でやれることの限界なのかなと思った時、社団法人法が変わることを知り、社団法人化を考え始めました。やはり、きちんとした体制作りが大切と判断したからです。 |
鈴木 |
同じですね。個人というか、法人であっても、一つの会社の限界というものがあります。公益性の高い事業を進めていくには、それにふさわしい組織がある、私もそう思います。 |
高村 |
そうなんですよ。そこで、リペア・リフォーム・リサイクルをサポートする会社に声をかけて、協議会化を図りました。一緒にやろうという主要メンバーを集めて、さあスタートしようという時に、ちょうどリーマンショックがあって、立ち上げが遅れました。その半年後に、一般社団法人を設立しました。 |
鈴木 |
ということは、2009年の、 |
高村 |
7月です。ちょうど一年前ですね。 |
鈴木 |
私たちが前身である任意団体の「日本リ・ファッション推進委員会」として「リ・ファッション
ワークショップ2009」を行ったのが2009年7月4日ですから、ほぼ同じ頃、産声を上げたわけですね。一般社団法人化したのは9月なので、私たちのほうが少し遅いですが…。
リ・ジュエリーの「リ」は、リペア・リフォーム・リサイクルからですか。 |
高村 |
そうです。先ほどもお話しましたが、使われていないジュエリーのメンテナンスを行うように呼びかけるきっかけになれば、いい。ジュエリーのリペア・リフォーム・リサイクルをイメージしてもらうには、「リ・ジュエリー」だと。
この業界の構造の特徴的なことは、他の業界のように大手企業があってマーケットシェアのほとんどを取るというのではなく、中小企業が林立しています。個人でもできる仕事です。以前は、ダイヤモンドのシンジケートのデビアスのように、アメリカ流のマーケティング手法で大きな動きを作り出していました。「婚約指輪は給料の3か月分」というキャンペーン、ご存知でしょう? |
鈴木 |
はい、その言葉はよく知っていますが、デビアスが作ったとは知りませんでした。 |
高村 |
「3か月分」はすっかり定着して、常識のようになっていますね。1970年代に大々的なキャンペーンを張って関係各社が参加しました。まあ、その後いろいろあって、バブル以降、業界を牽引していくリーダー的な存在というか、中小企業だけではできないことをやってくれるところがなくなりました。だからこそ、業界の中に団体が必要なのです。共働化のメリットがあると思います。
ジュエリーは不要不急の商品です。宝飾店というのは、なくてもいいものを売っていく商売です。持っているジュエリーのデザインが古臭いと思っても、壊れてしまったとしても、それをどうにかしなくては生きていけないというものではありません。今でなくても、全然かまわないのです。この景気では尚更のこと。消費者が自分から進んで動くということは決してありません。だからこそ、仕掛けが必要なんです。誰かに何か言われれば動くかもしれないからです。実際にいろいろと誘いかけをしているお店のほうが、売上げが伸びていますね。何もやらない店は駄目。至極全うな競争が始まっているように思えます。前向きな努力をしている人が結局は勝つのではないでしょうか。 |
鈴木 |
その前向きな努力を一緒にしていこうというのが、協議会の目指すところなのですね。 |
高村 |
そうです。でも、考え方や方向性に関しては理解しても、行動しない人が多い。自分で決断しないんですね。現在のところ、約190社が加盟しています。協力会社20社に小売会社170社250店舗です。会員増強はなかなか大変。鈴木さんも、感じているでしょう? |
鈴木 |
ええ。協会の趣旨には賛同してくださっても、すぐに会員になってくださるわけではありませんね。
協議会の事業について教えてください。 |
高村 |
個別企業ではできない、対ユーザーに向けての情報発信、働きかけをしていきます。リ・ジュエリー、つまり、リペア・リフォーム・リサイクルなどの受け皿として信頼のあるものにしたいと思っています。そのために、当面2つの資格に注力していきます。
今年1回目を行うのが、「ジュエリー・リモデル・カウンセラー資格検定」。宝飾店に持ち込まれたジュエリーをお客様の要望を伺いながら、作り変えられるかどうかの資格検定です。
来年から、「査定資格検定」も年1回行います。ダイヤ、サファイアなど宝飾品をきちんと査定して、適正価格で買い取り、販売を行うための検定です。質屋さんではなく、宝飾店が買取の窓口になれば、二束三文で買い叩くということはなくなるはずです。消費者としては、使っていない宝石を安心して売って、新しいものを買うことができるようになるでしょう。 |
鈴木 |
資格認定ですね。私たちもリ・ファッションの専門資格を考えているところです。目指すところが同じだと、いろいろな仕掛けというか、事業も似てきますね。
ところで、高村さんは、ずっと宝飾関係ですか? |
高村 |
最初はまったく違う仕事で、出版・広告関係の会社でコピーライターをしていました。コピーを書いているとクライアントにいろいろ言われます。ならクライアントになろうと、たまたまコピーライターを募集していた田崎真珠に入りました。しかし、社内にもクライアントがいるということがよく分かりました。その後、外資系の金のマーケティング会社の小売店を担当しました。世界的な会社で、当時は本当にいろいろ勉強しました。まったくの業界人ではないからこそ、見えるものがあると思っています。 |
鈴木 |
同感です。私ももともとファッション関係というわけではありません。だからこそ、大きな変革期を迎えたこの時期に、業界の発展に寄与できることがあるのではないかと思っています。
高村さんにとってジュエリーとは? |
高村 |
商材としてみた時に、ジュエリーというのは客観的物差しが余りありません。「私が好きだから、それでいいじゃない」という商材です。自由度があるわけですね、それがジュエリーの良さだと思います。スペックだけでは計れない、曖昧であるところがとても面白いと思います。 |
鈴木 |
ジュエリーが曖昧とは面白い指摘ですね。私たちも「いいものを長く愛用しよう」と提唱していますが、この『いいもの』がなかなか定義しにくい。まさにスペックでは計れない、曖昧さがあります。それも含め、法人の設立時期も、きっかけも、やっていこうとしている事業も共通点がいっぱいあるようです。ぜひ、ご一緒に進めてまいりましょう。今日は、どうもありがとうございました。 |
|
高村秀三(たかむら・しゅうぞう)
出版社、広告制作会社を経て、田崎真珠販売企画室勤務。宝飾デザイン専門誌「ジュエリースタイリング」(柏書店刊)編集長を経て、金のマーケティング機関「ワールド・ゴールド・カウンシル」の小売店担当を勤めた。
オーダー、リフォーム&オリジナル・ジュエリーを柱のひとつとする宝飾店グループ「日本カスタム・ジュエラー協会」を主宰した後、同協会を包含する新しい団体「ジュエルReクラブ」を立ち上げ、それを母体にこの度「一般社団法人 日本リ・ジュエリー協議会」を設立し、現在は専務理事。
日本を代表する宝飾店の新しいコラボレーショングループ「トップ30ジュエラーズクラブ」の事務局長も務める。
昭和23年福井県生まれ、明治大学仏文科卒
・好きな食べ物は? トンカツと力(ちから)蕎麦 モチが好きなのです。
・座右の銘は? 「急がば回れ」 回り道をしているように思えても、それはけっしてムダではない、という教えだと解釈しています。
・好きな音楽(歌、曲)は? マーラーのシンフォニー5番 ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」を見て好きになりました。 |